ごあいさつ

2008年の第12回がん分子標的治療研究会総会は6月26日(木)、27日(金)に東京の学術総合センターで開催されます。

がん分子標的研究会総会にはいくつかユニークな特徴があるように思います。「分子標的」は今では業界の言葉として珍しくありませんが、当初は、単によいものを選んで使ってみるのではなくて、理論的にがんを追求して、その基礎を重視して治療につなげて行こうという新規性がありました。この精神は現在につながっていると思います。また、講演は一会場です。さらに、一般口演は比較的短時間で、演題を多くするようにしています。このように、この研究会は、すべてが聞けるように、また、少しでも口頭発表を増やそうという努力がされてきました。以上のような、いくつかのユニークな特徴は第12回研究会にも生かしたいと思います。

今回は「がん分子標的治療に関して、化学から生物へ、生物から臨床へ」をテーマとしています。ケミカルバイオロジーは流行り言葉ですが、この分野では薬剤の標的分子をケミストリーの手法によって解明することができます。ケミストリーがあって、初めて有用物質を要領よく探索したり、創製することができます。分子生物学中心の生物学に化学が取り入れられるのは素晴らしいことで、特に、新しいがん治療の発展には不可欠です。第12回研究会では、公募演題にメディシナルケミストリーを追加し、ケミストリーを広く取り入れられたらと思っています。1日目のシンポジウムはがん分子標的治療につながるケミカルバイオロジーを予定しています。一方、期待される化合物や治療法が出て来て、その後、phase 1臨床治験に入るまでの段階はなかなかイメージできないところです。「生物から臨床へ」の段階では、生物学として例えば化合物の動物実験を含む多くの結果が出され、その生物活性が、新しい治療を目指す臨床系に評価され、興味を持たれることが最も重要であると思います。薬剤のパワーがあればあるほど、より強く興味が示され、開発の成功率は高くなるでしょう。このようなことも含め、研究会への臨床系の参加はきわめて重要なことであります。2日目のシンポジウムは臨床研究室からのがん分子標的治療研究を多く予定しています。

第12回研究会は、若手の先生方に発表、参加し易く、興味を持っていただけるように、また、企業の先生方の発表が多くなるように願っています。第10回、11回とも研究会は充実して活発になっており、多くの方のご指導、ご支援があってできることですが、この右肩上がりを続けられるように努力したいと思います。

第12回がん分子標的治療研究会総会
会長 梅澤 一夫
慶應義塾大学理工学部応用化学科